表現と物語
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作品を作ることについて語られたものと、「物語とは何か?」のヒントになりそうな文章を集めました。
作家
物語
>『物語とふしぎ』を書いているうちに、この本には書かなかったが、子どもの頃に読んだ面白い話を思い出した。(中略)
あるところに幽霊が出て人々を困らせるのだが、その幽霊は出てくると、「今宵の月は中天にあり、ハテナハテナ」と言うのである。
確かになぜ月は中天に浮いているのか、ふしぎ千万である。これに対して、納得のいく説明ができないものは、ただちに命を失ってしまう。恐ろしいことである。まさか、当時は万有引力の法則がわかっているはずもないし、どう答えるのか。ところで水戸黄門は幽霊の問いかけに少しもあわてず次のように答えた。
「宿るべき水も氷に閉ざされて」
すると幽霊は大喜び、三拝九拝して消えてしまった。つまり、これは、黄門の言葉を上の句とし、幽霊の言葉を下の句とすると、三十一文字の短歌として、ちゃんと収まっている。そこで幽霊も心が収まって消えていったというわけである。
子ども心にもこの話は私の心に残ったのか、未だにこんな歌の言葉まで覚えている。私は子どもの頃から妙に理屈ぽくて、「なぜ」を連発し、理づめの質問で大人を困らせていたので、論理によらない解決法というのが印象的だったものと思われる。これはひとつの日本的解決法と言えるのではなかろうか。
> 何度も述べてきたように、人間は不本意な状況に置かれると、「なぜ?」と問います。そして、不本意な状況があまりに深刻だったり、あまりに長期化したりすると、「なぜ生きてるんだろう?」と問うてしまうようになります。
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